モモ (Momo) の話
9月24日 この日は モモにとって 歴史が変わった日 と言えるでしょう
2013年9月24日 つまり去年のこの日
彼女は 畑に仕掛けられた イノシシの罠にかかり
通報されて 右前肢をひどく負傷したまま
栃木県南ドッグセンターに収容されました
3日後の9月27日には 収容期限が切れて 殺されることになっていました
彼女はその直前 9月26日 そこで 7匹の子犬を出産しました
ベッポムーは 西那須野いぬねこ里親会の ボランティアスタッフです
2013年9月29日(日) いつもの日曜日と同じように
たんぽぽ広場での里親会に 出かけていきました
里親会では 毎週 愛護センターの動物情報を貼り出します
収容期限の迫っている犬たちの写真を 掲示板に貼る時
ベッポムーは 感情の一部を殺します
人間として まともな感情を持っていたら 普通にしていられない・・・
わが身の無力を どこまでも思い知るのです
その日 とみたさんが手書きで 保護を呼びかけている 1枚に
彼女は 強く心を揺さぶられました
保護・収容直後に 子犬5匹 出産しました。
保護できる方、場所を探しています。
行政には、殺処分を待ってもらっています。
よろしくお願いします。

大きなお腹で 横たわっている白い犬でした
首輪はつけていません
ベッポムーは ずっと心がザワザワしていました
里親会が終わって 掲示板からはがす時
その1枚を 自分のリュックに入れました
その夜 彼女は ベッポマーに話をしました
犬を助けたい
母子6匹
一刻を争う状況にある
この家で引き取って 一所懸命 里親を探したい
何とか命を助けてやって欲しい
聞かされた ベッポマーは 頭がクラクラしました
我が家に 犬が6匹?!!!!!!
人に慣れていない母犬に 生まれたばかりの子犬5匹?!
いったいぜんたい 何だっていうの・・・?
我が家の状況のどこをとったって
「わかりました。 大丈夫 うちで引き取りましょう。」
なんて 逆立ちしたって 言えるわけがない
それでも・・・
何とか命を助けたいという ベッポムーの願い
「生を!」 という願いに 「否!(死)」 と答えることは
ベッポパーにも ベッポマーにも 出来ませんでした
「今の 我が家に 犬6匹なんて
ハッキリ言って あり得ない
よし大丈夫 なんてこと 一つも言えない
どうなるか 皆目見当もつかない
ただ・・・いのち のことだから・・・
ベッポムーが助けたいって 言うから
私たちは その願いを叶えてやりたいと思ってる
こうなったら 破れかぶれ
え~い!もう なるようになるさ! って感じ
いいよ 引き取っても・・・ 」
言った後 ハ~・・・とため息が出ました
またか~・・・後先考えずに やっちゃったな~・・・
犬たちは この時 愛護センターにいました
子犬は4匹になっていました
2匹は出産直後 もう1匹は数日後に
低体温のために死亡と報告書にあります
さて こうして 母子5匹の命の安全は 確保できました
母子一緒ということで 子犬の世話は母犬がしてくれるから
庭に 犬小屋付きの 大きいケージを設置して
母犬が 安心して子育てできる場所を作ってやれば
当面は 母犬の世話が 私たちの仕事
・・・と なるはずでした
ところが
その3日後の 10月2日に
ベッポムーと私は 必死の思いで
腕の中の子犬に ミルクを飲ませていたのです!
現実は いつだって 予想を はるかに超えて やって来ます
母犬はどうしたかって?
イノシシのワナにかかった右前肢の 傷の状態がひどく
このままでは壊死のおそれありということで
愛護センターからの引き出し手続き一切をして下さった
Kacoさんが センターから 病院に直行して
母犬 いえ モモは (この日 母犬は Kacoさんから
モモ という名前をつけてもらっていました)
宇都宮の動物病院に 緊急入院していました
生後7日の4匹の子犬が母親なしに 残されました
当面 2匹は 宇都宮の 預かりさん宅で
もう2匹は 我が家で 世話をすることになりました
やむを得ない状況ではありましたが
家族全員一緒に という願いは この日叶いませんでした
それから8日後の 10月10日
モモは いくつかのエピソードを残しました
その日 モモは退院しました
肢の傷が治ったからではありません
病院から 退院を要請されたのでした
夜 病院に人がいなくなると モモは
外に出ようと 毎晩暴れて ケージを食い破ろうとし
入っていたケージを ほとんど破壊してしまうほどだったようです
退院させたものの モモの行き場がなくなりました
我が家で引き取るのは 無理だろうと
Kacoさんも とみたさんも 思いました
庭にケージを置いて その中に入れても
きっと 破って逃げようとするだろう
子犬と一緒に出来る状態ではないのでは・・・
そして 当時 猫のシェルターとして
西那須野いぬねこ里親会が 借りていた場所の 犬舎の一つを
当座のモモの住まいにしようと 考えて下さいました
宇都宮から Kacoさんが モモを 車に乗せて 連れてきて
とみたさんが 首輪とリードをつけて その犬舎に 入れました
宇都宮からの移動の車中で モモは
ケージの扉の金網を かじって 壊していました
とみたさんから電話で事情を聴いて
ベッポムーと二人で 犬舎のある場所へ向かいました
母子一緒にしてやりたいという願いは
どんどん遠のいていくように思われました
その頃 私たちは 数か月前から 猫の世話のために
夕方 週に4~5日 そこに通っていました
子犬2匹にミルクを飲ませて
君たちのママに会いに行ってくるからねと
その子たちの匂いの付いたタオルを持って
いつもより早く家を出ました
着いて モモの様子を見ようと 犬舎に向かいました
犬舎は もぬけのからでした
フェンスの金網は破られて 大穴があいていました
犬の姿はどこにもありませんでした
急いで とみたさんに 電話で知らせました
犬がいない! と伝えている目の前を
黄色く汚れた犬が 横切りました
犬の来た方を見ると 後ろの方に
首につけていたであろうカラーが 落ちてころがっていました
えっ? これが モモ!?
リードを引きずって歩いていました
首輪を嚙み切ろうとしたのか もう少しで切れそうな状態の首輪が
さるぐつわのようになって首と喉を締め付けていました
電話口で とみたさんが
首輪をつける時おとなしかったから
手ではずしてやれるんじゃないか と言ってくれたのですが
ケージやフェンスまで噛み切った この犬の口元に
手を近づけるのは ためらわれました
意を決して 近寄って ベッポムーが首輪をはずしてやりました
犬はその間 じっとおとなしくしていました
そして 首輪とリードから自由になって
犬は 私たちの足元に ドサッと倒れて横になりました


モモは ケージを壊したり フェンスを噛み切ったりという
荒々しいイメージとは ほど遠い姿で すぐ隣に 横たわっていました
疲れ果てた様子で 倒れた場所から 1ミリだって動く気配を見せません
私も 腰をおろし 猫たちへのおみやげに持って行った ささみ肉を
掌にのせて 口元に近づけてみました
モモは 匂いを嗅いで すぐに食べました
1ビン全部食べました
食べ終わると 私の掌をペロペロなめました
私は 持っていた 子犬の匂いの付いたタオルを 差し出しました
モモは 匂いを嗅いで 耳をピンと立て タオルの下を覗き込みました
タオルに鼻をくっつけて ずっと子犬の匂いを 嗅いでいました

子犬を探してる!!
会いたがってる!!!
思わず涙が ドーッと出ました
そうか そうか
わかったよ!!!
大丈夫! あなたの赤ちゃん うちで 預かってるからね!!
一緒に うちに帰ろうねっ!!!
わたしはモモに こう言いました

1年前のことですが 今でもありありと思い出します
この時 私たちの間に流れたもの
深くて温かい共感のようなもの
それは 人間であるとか犬であるとか そういうものを
超えたところにあるものだったように思います
それは 瞬時に湧きあがり 広がって 空間を満たしました
迷いや不安の入り込む余地のないほど
圧倒的なパワーを持っていました
糞尿で 黄色く汚れて 悪臭を放っている
モモの体を タオルで拭いてやりました
モモはどこを触っても おとなしくしていました
タオルは 表も裏も すぐに茶色になりました
まっ黄色だった毛の色が 少しだけ 白くなりました
その間 ベッポムーは 1人で 猫たちの世話をしていました
彼女も 子犬たちを 母犬に会わせてあげたいと思いました
一週間 ミルクを飲ませて ウンチオシッコの世話をしてきた
2匹の子犬を 本当に愛おしく思っていました
子犬がこんなにカワイイ生き物だということを 彼女は初めて知りました
その夜 子犬にミルクをやる時間は とうに過ぎていました
ベッポマーは 家に帰らなければなりません
とみたさんが 別の方法を考えて モモをもう一度犬舎に入れるために
夜遅く 来ることになっていました
ベッポムーは とみたさんが来るまで 1人で 残ることにしました
私は 再びとみたさんに電話をして
犬を 家に連れて帰りたいと伝えました
ここに置いていくのは 不憫だと
とみたさんは 大丈夫かと 心配して下さいましたが
子犬と一緒になれば 落ち着くのではないかと
犬の様子を見て 連れて来られるようだったら
何とか 連れて来てほしいと お願いして
ベッポムーとモモとを そこに残して 家に帰りました
とみたさんは それから2時間ほどで
ベッポムーと モモを連れて 来てくださいました
8日ぶりに 母子は再会しました
モモは すぐに子犬の体を舐め 育児を始めました
その様子を見て とみたさんが もう2匹も 一緒にしてやれると
すぐに Kacoさんに 電話をして下さいました



そしてその翌日 10月11日
宇都宮から Kacoさんが 2匹を連れてきて下さって
9日ぶりに 家族全員が 無事に再会を果たすことが出来ました





これが 我が家に モモが やってきた お話です
モモの運命が転換した日 9月24日
この日を ベッポはモモの 誕生日にすることにしました
昨日が その日でした

ベッポムーは 新しい首輪と バンダナを モモに贈りました

ベッポマーが バースデイケーキを焼いて 皆でお祝いしました




モモのお話には まだ続きがあります
またいつか 続きのお話をいたしましょう
さて明日は モモが懸命に守ろうとした子犬たちの 1歳の誕生日
台風も去り よい日になりそうです

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